ズッケエロ戦とアバッキオ(2/3)
アバッキオにとってズッケエロ戦の勝利は、過去に縛られた日々からの勝利なのだ。
‥‥‥と言ってみたところで誰にも理解してもらえないので、少しずつ解説していくシリーズ、その2です。
アバッキオの警官時代のエピソードを中心に見てきた前回。今回は、ブチャラティの行動と、ムーディー・ブルースの能力について、解釈してまいりますよ。
アバッキオ、大後悔。
©LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社・ジョジョの奇妙な冒険GW製作委員会
社会の矛盾や二重性に屈した結果、本来ならアバッキオ自身が殺されるところだったのに、現実に殺されたのは相棒のほうだった。
自分の一瞬の気の迷いが、相棒の死の原因となったのだと、アバッキオは考えるようになったにちがいない。
アバッキオはそのとき、本来死ぬはずだった肉体の代わりに、心が死んだ。
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だから「アバッキオの未来はそこで消えた」し、「どこで誰が死のうが、自分の手足がなくなろうが、心は動かな」くなった。
アバッキオは酒に浸り、闇落ちした。
そんな彼に声をかけたのが、ブチャラティだった。
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大切なのは結果ではなく、そこに至る道筋。過去に縛られるのはもうやめろ。
通りに立つブチャラティにそう言われたアバッキオは、一度室内の暗闇を見やってから、ブチャラティに向き直る。過去と後悔に縛られて生活していた日々のことを一瞬思う。
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この時のアバッキオは何を考えていたんだろう…。
私は、相棒の死がすでに過去にあることを、やっと心で理解した瞬間なのではないかと思う。
相棒の死を受け入れたことで、ブチャラティについていき、ギャングに入るという未来向きの決断ができたのではないだろうか。
そしてポルポの面接を受けて。
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アバッキオが手にしたスタンド「ムーディ・ブルース」は、過去を再生する。
過去は変えられない。なぜ相棒を殺すという結果が生まれたのか、アバッキオは失意のうちに何度も何度も振り返って後悔したにちがいない。自分の視点だけでなく、相棒の視点からも。
それが、「他人の目線で出来事をありのままに再生する」というスタンド能力につながっている。
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そして後悔の間は、他に何もできなくなっていた。だから、スタンド能力を使ってリプレイしている間は他の攻撃はできず、丸腰なのだ。
「過去を再生する」という、警官の捜査に非常に役立ちそうなスタンドを、警官を辞めてから手に入れる。まったく、皮肉な話だ。
今回のまとめ
ブチャラティの行動と、アバッキオのスタンドについて見てきました。
- アバッキオは一瞬の気の迷いのせいで相棒を殺してしまったと考えた。
- そのとき、死ぬはずだった肉体の代わりに、「心が死んだ」。
- 過去に生き、酒浸りの日々を送るアバッキオに声をかけ、救い出したのがブチャラティ。
- 過去を再生するスタンドを得たのは、相棒の死を何度も思い出し、理由を探っていたから。
次回、最終回です。
ズッケエロの使った船が2重だったことと、アバッキオの過去とのつながりについて。ズッケエロ戦はどういう意味だったんでしょうか。ご期待ください。